2014年7月25日金曜日

過払金訴訟 遅延損害金 期限の利益喪失について 最高裁判決1

元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において,借主から約定の毎月の返済額を超過する額の支払がされたときの充当関係

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84335&hanreiKbn=02

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140724143105.pdf

要旨
「元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結され
た場合において,借主から約定分割返済額を超過する額の支払がされたときには,
当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事
情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する
債務に充当されることはないと解するのが相当である。」

コメントは29日の判決がでた後でまとめます。

2014年7月18日金曜日

DNA鑑定結果による親子関係不存在確認請求事件最高裁判決

DNA型鑑定で血縁関係がないことが明らかになった場合に法律上の父子関係を取り消せるかが争われた3訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は17日、父子関係の取り消しを認めない判断を示した。
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/140717/evt14071715540030-n1.html

 父子関係の安定のために,推定される嫡出子については,DNA型鑑定で血縁関係がないことが明らかになった場合でも法律上の父子関係を取り消せないと最高裁は判断しました。

 また,親子関係がどうであるべきかは,国の基本的な枠組みに関する問題であり,裁判所で具体的事案の解決をはかる(その際には現行法で解釈できる範囲から大きくはずれてしまう結果となりうる)というのではなく,立法で解決すべきであるとしました。
 反対意見の裁判官は,事案の解決の具体的妥当性は裁判の生命であって,本件のケースでは,抽象的な法的安定性の維持よりも優先するものがあるので,親子関係の不存在を認めるべきであるとしました。

 現在の民法の家族法が制定されたのは第2次世界大戦後直後くらいの昭和22年であり,当時と現在とでは,家族観や人の生活も異なり,生物学上の親子関係についてもDNA鑑定というほぼ絶対といってよい調査方法もできるなど大きな変化がありました。


 法律上の父親(A),生物学上の父親(B),母親(C),子供(BとCの子=D),他の子供(Aの他の子供やBの他の子供,E)について,それぞれ保護されるべき利益はあるとおもわれ,どのような場合に,何ができるようにするかの調整は,まさに,立法で解決すべき問題だと思います。

 

2014年7月11日金曜日

号泣議員の政務活動費使途不明瞭問題について

近時,号泣議員の問題がニュースの上位にきており,
そんなことよりも,国政の議論をニュースにとりあげろと思います。

政務活動費とは,地方議員の調査研究活動などのため,議員報酬とは別に公費から支給される費用であり,地方自治法第100条に規定があります。

ニュースによれば,所属県の県議会事務局は,当該議員の行為に違法性はないとしていますが,
政務活動費の支出の要件がないのに,それを知りつつ,政務活動費の請求を行った場合は,刑法上の詐欺罪が成立することになります。

生活保護費の不正受給と同じ感じです。

支出の要件がないのに,あると思って請求したが,実はないことが後で判明した場合は,詐欺にはなりません。

故意犯(詐欺罪も故意犯)の成立に必要な故意(犯罪を犯す意思)がないからです。

マスコミによれば,当該議員は,政務活動費として交通費の請求を行い,交通費を使ったと報告した日には,実際には行っていないかもしれないが,別の日には実際には行っており,報告をした交通費を要した回数と金額は間違っていないと言っているようです。

詐欺罪の成立には,財産的損害に向けられた欺罔行為(だます行為)が必要なので,結局,請求した交通費の総額が誤っていなければ,受給した額の政務活動費を受け取る権利が議員にあり,詐欺になりません。

当該議員の処分や当該議員がどうすべきかは,所属県の県民が考えればよいと思いますが,消費税がアップして数兆円というお金を国は新しく得るわけですから,国民が使途に納得できる使い方をしてほしいと思います。


2014年7月4日金曜日

過払金訴訟 遅延損害金 期限の利益喪失について 

数年前に比べると,過払金請求の裁判の依頼は激減しました。
過払金に関する最高裁判例も多くでており,実質的な争点となるものは,もう,遅延損害金の発生の有無のみであるともいわれています。

借主が期限の利益を喪失すると,遅延損害金が発生するのですが,借主が期限の利益を喪失したか否かについて,(1)期限の利益の再度付与(2)信義則(3)いわゆるボトルキープ論の3つの反論が主に考えられます。
(1)期限の利益の再度付与については,平成21年4月14日最高裁判決,(2)信義則については,2つの最高裁平成21年9月11日判決があります。

これらの判決では,延滞後に作成された書面(利用明細書等)が重要とおもわれます。
すなわち,利用明細書で,支払分のうち元金分を除く分を遅延損害金として受領する記載をしていれば,貸主は遅延損害金として扱っており,期限の利益の再度付与もしておらず,信義則上も期限の利益の主張をしてよいという方向に流れやすくなります。

一方,利用明細書で,支払分のうち元金分を除く分を利息として受領する記載をしていれば,貸主は遅延損害金は発生していないものとして扱っており,期限の利益の再度付与をしていたり,期限の利益の喪失を主張することも信義則上許されないものとされたりという方向に行くようです。

これらと別に,(3)いわゆるボトルキープ論があります。
ボトルキープ論とは,利息制限法の制限利息以上の弁済を行った場合に,飲み屋のキープボトルのように,ストックが出来て,このストックを使い切らないと,新しいボトル代金が発生しないように,期限の利益の喪失にもならないという考え方です。

このボトルキープ論については,平成26年7月24日と29日に最高裁判決が出るようです。

2014年7月2日水曜日

集団的自衛権行使容認 閣議決定について

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0103O_R00C14A7MM8000/

憲法とは,国家の基礎となる法です。つまり憲法とは国家のあり方を決めたルールなのです。
もうすこしわかりやすく言うと,強制力をもった国家権力がやっていいこととやってはいけないことを決めたルールが憲法なのです。

国家権力はほっておくと暴走し,国民の権利が守られなくなるという思想が根底にあって,国家権力の行動を制限する必要があり,そのために考えて作られたのが憲法なのです。

ですから,国家権力がやっていいことを増やすことを,国家権力自身が憲法の改正なくやってしまうことはできないのです。

また,国家権力が,いままで憲法ではやってはいけないとされてきたことを,実は憲法でやってもいいことだったのだ(憲法解釈の変更)といって,やっていいこととして取り扱うことも,実質的には国家権力が憲法を改正することと同じで,憲法の意味がなくなってしまうので,これも許されないものと私は思います。

福岡県弁護士会も集団的自衛権の行使を可能とする内閣の憲法解釈変更に反対する決議をしています。
http://www.fben.jp/statement/

集団的自衛権:行使容認閣議決定 県弁護士会、「憲法違反」と街頭活動−−西鉄福岡駅前で /福岡
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/m20140702ddlk40010376000c.html

こういう問題は,国民一人一人が,他人事にせず,自分たちの将来に関することとして,しっかり考える必要があるものと思います。

そして,集団的自衛権の行使が必要と国民の過半数が思えば,正々堂々と憲法を改正して,国家権力がやっていいこととして,認めればいいのです。

みなさんもこの話題について,周りの人と話してみてください。「集団的自衛権とかよくわかんないよね」という話でもいいです。話題にすることが重要だと思います。