2015年9月16日水曜日

(最高裁判例)特定調停後の過払金請求(平成27年9月15日)

平成25(受)1989号不当利得返還請求事件
裁判年月日  平成27年9月15日
最高裁判所第三小法廷

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85318
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/318/085318_hanrei.pdf

 特定調停で清算条項付の調停をした後,過払金請求ができるかについては,下級審でもかなり見解が分かれていましたが,最高裁が判断をしました。

 まとめると,
特定調停で清算条項付調停をしても
1 調停時点までの過払金債権は失われない。
2 調停で決まった支払いは,有効で,その支払分は不当利得とならない(過払金に算入できない)
ということになります。

 特定調停は簡単にいうと,債務者の債務に関する話し合いを行う手続きであり,その話し合いで決まった内容が調停条項となります。(和解と同じようなものです)
 話し合いで決めるものですから,過払金債権があるのに,その前提をしらずに債務があることを認める内容の調停条項は無効ではないかという点が問題でした。

 今回も,裁判所は過払金債権者と貸金業者の利益の中間をとるような判断をしました。

 私が担当した事件で,特定調停後の過払金請求をしたものは多くはありませんが,請求した時期が古いものがほとんどでそのころは各貸金業者も返還に寛容であったためか,1件を除いて,一連計算で返金をしてもらっていた記憶があります。
 他の1件は,裁判までいきましたが,1審全面勝訴,控訴審で裁判所より清算条項有効と判断するので判決なら全面敗訴になるといわれ,全面勝訴額の4割程度で和解をしました。
 この事案は,いずれにせよ自己破産をしないといけない事案で,多く取り戻しても依頼者に返還できるものにはなりにくい一方で,破産手続費用のため,取戻し額が0円となってはならず,やむをえずに和解をしたものでした。
 今回の最高裁判例の基準に照らしてみると,その8割程度の金額を和解金として回収できていましたので,結果としてそれなりの解決であったと思います。