2024年2月6日火曜日

前科・逮捕の記事の削除

  最近、前科や逮捕のインターネット記事の削除に関する相談が増えてきました。

 インターネット上の記事は、なかなか消えない一方で、毎日のようにニュース・報道記事は多数掲載されており、それらの記事が転載されて拡大するということも多いです。

 このため、事件から年月がたったあとも、記事が残っており、これがその後の生活において、支障(就職や事業の取引に影響がある、個人的な交際に関して影響がある)が生じることも少なくないです。

 前科や逮捕の記事については、グーグルが検索結果の削除を求められた仮処分事件における最高裁決定(2017年)が支配的でしたが、最高裁2022年6月24日判決(ツイッター社に対する削除請求事件)で、

・個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきである。このような人格的価値を侵害された者は、人格権 に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき 侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。

・インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がされた場合に、上記の逮捕の事実が、不特定多数の者が利用する場所において行われた軽微とはいえない犯罪事実に関するものであったとしても、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、上記の者の上記逮捕の事実を公表されない法的利益が上記メッセージを一般の閲覧に供し続ける理由に優越すると認められ、上記の者は、上記情報ネットワークの運営者に対し、上記メッセージの削除を求めることができる。

⑴ 上記逮捕から約8年が経過し、上記の者が受けた罰金刑の言渡しはその効力を失っており、上記メッセージに転載された上記逮捕の事実の報道記事も報道機関のウェブサイトにおいて既に削除されている。

⑵ 上記メッセージは、上記情報ネットワークの利用者に対して上記逮捕の事実を速報することを目的として投稿されたものとうかがわれ、長期間にわたって閲覧され続けることを想定して投稿されたものであるとは認め難い。

⑶ 上記の者の氏名を条件として上記情報ネットワーク上を検索すると検索結果として上記メッセージが表示される。

⑷ 上記の者は、公的立場にある者ではない。

として、削除を認め、現在では、上記のような要素を考慮して削除を判断することが判例実務となっています。

記事媒体の性質や経過年数も重要な要素になりますが、例えば逮捕されたが不起訴となっているような事情があれば、削除されやすくなると思われます。

不起訴となったという事実の証拠としては、不起訴処分告知書(検察庁から発行)がありますので、刑事事件で不起訴になった場合は、不起訴処分告知書も取得しておくと、後々、よいと思われます。

削除要請については、なかなか、個人・当事者の請求では媒体が応じてくれないということもあります(事案の説明や証拠が不十分ということもありますが)ので、弁護士に依頼、相談することをお勧めいたします。