2016年8月31日水曜日

解決事例3(権利侵害の書き込みをした人(加害者)からの削除要請)

 通常,インターネット上の書き込みで,削除をしてほしいという御相談,御依頼は,権利を侵害された人(被害者)ですが,まれに,書き込みをした人(加害者)からの削除の御相談・御依頼があります。

 書き込みをした人(加害者)は,書いたものの,それが権利侵害(名誉毀損,プライバシー権侵害など)であることを自覚,またはその可能性があると考えて,消したいと思ったが,電子掲示板に一度書いてしまうと,自分の意思では消すことができない(削除パスワードを設定していなかった場合なども含む)ため,御相談・御依頼に来られるようです。

 書き込みを削除することができると,書き込みのIPアドレス等発信者特定情報が消えるところが多く,事実上,被害者から損害賠償請求を受けない効果が期待できます。また,損害賠償を受けたとしても,書き込みが削除済みであると,残っているより低額で済むことになります。

 しかしながら,プロバイダ責任制限法や同法に準拠するガイドラインによる削除要請は,被害者からの請求によるもので,加害者からの削除要請は,予定されていません。

 すなわち,加害者からの削除要請は,法律に基づかない,掲示板運営者に対する単なる「お願い」にすぎません。
 このため,加害者からの削除要請については,削除されない可能性が十分あります。

 一方,各電子掲示板運営者は,各自で,運営規則(削除要件)を定めているところが多く,この運営規則(削除要件)に該当することを具体的に指摘して削除要請をすると,削除に応じてくれることも少なくないです。

 一般の方の削除要請は,削除理由として,この運営規則(削除要件)に該当するという内容がない,または,ほとんど書かれていないため,削除が認められないのです。

 書き込みをしたある方は,自分で,複数の書き込みの削除要請を掲示板運営者に出したが,全部,削除されないままであったため,当職に削除要請をするよう御依頼されました。

 当職が,掲示板運営者に対し,運営規則(削除要件)に該当するという内容と掲示板運営者が削除しようと思うようなあることを記載して,削除要請をだしたところ,削除要請をした書き込みの8割以上が削除されました。

 加害者からの削除要請については,作業量の関係で,通常の被害者からの削除要請よりも,弁護士費用は高くならざるをえませんが,それでも,被害者が発信者情報開示請求をして特定をされて損害賠償請求されるよりも(発信者特定のための費用は損害賠償請求における損害に含まれるという下級審判例があり,一般化しつつあります)低額の支出ですむと思われます。
 
 

2016年8月17日水曜日

発信者情報開示請求3-2(ホストラブ,ホスラブの運営者について)

 ホストラブ(ホスラブ)に書き込みをされて被害をうけた方から御依頼を受けた件で,依頼者様からよく聞く話は,「ほかの弁護士に相談をしたが,ホストラブ(ホスラブ)は,海外の会社が運営をしているから,裁判もできないため,手のうちようがないと言われた」というものです。

 ホストラブ(ホスラブ)の運営者(運営会社)は,当該掲示板内に表示がないため,探すことは容易ではありません。
 
 通常は,ドメインのwhois情報を参照して,運営会社を特定するのですが,ホストラブは海外の会社の登録代行を使用していると思われ,whois情報からは,海外の登録代行会社が判明するだけです。

 海外への照会を行っているうちに,通常は3か月以上は経過するものと思われますので,発信者情報開示請求ができないことになり,大半の法律事務所に依頼をしても,ホストラブ(ホスラブ)については,発信者情報開示請求で,発信者の特定はできないことになると思われます。

 このため,ネット関連の事件を多く取り扱っていない弁護士であれば,このように言うこともままあると思われます。
 
 しかしながら,当事務所では,ホストラブ(ホスラブ)のサーバー管理会社及び運営者(運営会社)がどこであるか,その調査方法(仮処分における疎明資料の収集)も熟知しており,迅速な仮処分申立が可能となっております。(これについてはノウハウの部類に属しますので,申し訳ありませんが,お話しできません)

 運営者(運営会社)は東京にある日本法人のため,東京地裁にて,仮処分申立をして,IPアドレス等の開示請求をすることが可能です。

 ホストラブ(ホスラブ)に対する発信者情報開示請求や記事の削除要請については,実績のある当事務所に御依頼ください。

発信者情報開示請求の時間的制限(ネット記事被害で損害賠償請求する場合の時間的制限)

 インターネット上に掲載された記事(コメント,レス)で,被害(名誉毀損,プライバシー権侵害など)を受けた場合,発信者情報開示請求をして,書いた人を特定し,その上,で書いた人に損害賠償をすることになります。

 しかし,発信者情報開示請求をして書いた人を特定するためには,時間的制限があります。

 これは,発信者情報開示請求の手続きが,①記事がかかれた掲示板の運営者に,書き込みをおこなった者のIPアドレス等の開示を求める,②開示されたIPアドレスをもとに,キャリア(ドコモ,AU,ソフトバンク)やプロバイダ(OCN,NIFTYなど)に契約者情報を求めるという2段階の手続きを踏む必要があり,特に②のほうのデータが残っている期間が短いからです。

 キャリア(ドコモ,AU,ソフトバンク)のログ保存期間は,概ね3ヶ月間とされているようですし,国内プロバイダも3か月間~6か月間としているところが多いようですので,書き込みが行われてから3か月経過していると,かなり賠償請求は難しい,6か月経過しているとほぼ可能性がないと考えられます。

 また,掲示板運営者にIPアドレスの開示を求めてから,開示があるまでに,2~3週間かかることもありますので,書き込みが行われてから2か月が経過していると,手続に要する期間を考慮すると,請求が極めて困難ということになります。

 このように,ネット上の記事で被害をうけた場合は,後で,賠償請求をすることは難しいため,すぐに,弁護士に相談にいくようにおすすめします。