2025年7月18日金曜日

国選刑事事件の思い出1

 1 もう、国選刑事事件について登録をはずしたので、現在は、国選刑事事件が配点されることがないのだけど、昔、それも弁護士になりたてのころの国選刑事事件について、記憶にのこっているものを書きたいと思います。

 記憶をもとにした私のメモ書きを生成AIで小説風にしてもらいました。



貧しき母子の弁護と情状

第一章:路傍の影、若き弁護士の憂い

福岡の街角に、まだ真新しいスーツの匂いを纏う一人の若き弁護士がいた。弁護士になって間もない頃、おそらく国選弁護人を担当した最初か二番目の事件だったと記憶している。被疑事実は窃盗。被害額は数千円から数万円程度と、決して巨額ではないが、その背後にある人間の営みは、彼にとって重い問いかけとなった。被疑者――仮に「彼」と呼ぼう――は、ホームレスだった。母親と共に、福岡の片隅にある公園に粗末な仮住まいを築き、日雇いの工事で細々と生計を立てていたという。

数ヶ月、仕事がない期間が続いた。空腹は彼らの唯一の、そして最も容赦ない追手だった。耐えかねた「彼」は、以前働いていた工事現場から道具を持ち出し、質屋で換金して生活費に充てたという。それは罪であり、彼はそれを否定しなかった。

接見室で、彼は真っ直ぐに弁護士の目を見た。「悪いことをしたとは思っています。食うためだったとはいえ、罪は償いたいです」。その言葉に嘘偽りはなかった。だが、彼の瞳の奥には、故郷や未来への諦念とは違う、もっと切実な光が宿っていた。「住んでいるところにいる母と、飼っていた犬が心配でなりません」。弁護士は、胸の奥に微かな痛みを感じた。罪を犯した彼の、あまりにも人間的な願いだった。

自白事件において、情状酌量を得るには、近親者を情状証人として呼び、今後の監督を約束させるのが通例だ。そう習い、また、そうあるべきだと思い込んでいた。しかし、彼らの住まいは公園だ。ホームレスである母親を、裁判所の堅苦しい場に呼んで良いものか。弁護士は迷った。彼らの尊厳を傷つけることにならないだろうか。しかし、「彼」は言った。「呼んでください。母が元気か心配なんです」。その言葉に、弁護士は決意した。

第二章:公園のテント、母の背中

母親との連絡手段はない。電話もない場所にいるのだから、直接公園へ赴くしかない。それは、弁護士にとって未知の世界への一歩だった。

「彼」は、弁護士が母親に会うことを心底心配していた。何も食べていないのではないか、と。弁護士は、近所の「ほっかほっか弁当」で幕の内弁当を二つ買い、ペットボトルのお茶を二リットルも携えて公園へと向かった。まだ夏を思わせる日差しが、アスファルトを揺らめかせている。

公園に着いても、どこにいるか見当もつかない。だが、「彼」は教えてくれていた。「僕の名前を出して、母親はどこかと聞けば、この公園のホームレスはみんな知っていますよ」。半信半疑で、近くにいたホームレスの一人に声をかけた。「彼の母親はどこにいますか?」。すると、男はすぐに答えた。「ばあちゃん? ばあちゃんはあそこのテントにいるよ」。

指示されたテントへ向かう。そこには、想像していたよりもずっと小柄な女性がいた。背中が丸まり、顔の深い皺が、彼女が背負ってきた人生の重みを物語っていた。これが、「彼」の母親、「ばあちゃん」だった。

弁護士は、彼の状況、彼がどれほど母親を案じているかを伝えた。そして、裁判の際に証人として少し話してほしい、と頼んだ。母親は、息子が捕まったことは人伝に聞いていたが、会いに行くこともできず、ただ案じるばかりだったという。話を聞き終えた彼女は、安堵したように見えた。「子供のためであれば、何でもします」。その言葉に、弁護士の胸は熱くなった。

裁判所へは地下鉄に乗らなければならない。往復の電車賃を渡し、一人で来れるか尋ねると、「公園の知り合いについてきてもらうから大丈夫だよ」と、彼女は小さな声で答えた。

話が終わり、持参した弁当と飲み物を差し出した。「彼も心配していました。よかったら召し上がってください」。母親は深々と頭を下げ、心から感謝の言葉を述べた。その姿を見て、弁護士は再び悩んだ。苦労を重ね、遠出もままならないであろうホームレスの彼女を、裁判所という厳かな場に呼ぶことは、本当に正しかったのか。だが、改めて「彼」に母親の様子を伝えると、彼は心底安心し、食べ物を届けたことに感謝した。母親もまた、裁判所に行きたくないとは言わなかった。ひょっとしたら、悩んでいたのは自分だけだったのかもしれない。

第三章:裁きの日の、犬の涙

裁判の日程が迫り、最終確認のため、弁護士は再び公園を訪れた。前回と同じように、弁当と飲み物を持参して。当時はまだ物価が安く、二つのお弁当と飲み物を買っても千円程度だった記憶がある。

再び会った母親は、前回の食べ物のお礼を言ってくれた。やはり持ってきてよかった、と弁護士は思った。母親には、裁判で話すことを簡潔に三点だけ伝えた。「息子が二度と犯罪を犯さないように監督すること。仕事ができるなら仕事をさせること。住む家や収入については役所に相談すること」。彼女は普通の会話はできるが、難しい話は分からないと繰り返す人だったから、最小限に留めた。

だが、その時、ある痛ましい事実が告げられた。前回いたはずの犬がいなかったのだ。母親は悲しそうに話した。保健所の人が来て、ちゃんとした家の飼い犬ではないからと、野良犬として連れて行ってしまったという。おそらく、処分されてしまったのだろうと。弁護士の胸に、重い鉛が落ちた。この事実が、「彼」にどれほどの衝撃を与えるか、容易に想像できた。

裁判当日、心配していた母親は、時間通りに裁判所に来ていた。証人は宣誓書に氏名等を書くのだが、彼女はひらがなしか書けないという。ひらがなで名前を書いてもらった時、書記官は困った顔をしたが、母親の姿を見て、何も言えない雰囲気だった。

裁判手続きは、自白事件の通例どおり、滞りなく進んだ。そして、いよいよ母親の尋問が始まった。弁護側からは、前述の三点を、二、三分で最小限に話してもらった。その後、検察側の反対尋問、裁判所の補充尋問へと移るのが常だ。通常であれば、検察官から「今回の事件も監督できなかったのに、今後本当に監督できるのですか!!」などと、厳しい詰問が飛ぶはずだった。しかし、この日の検察官も裁判官も、母親の佇まいを見て、厳しく問い質す気は全くないようだった。質問は一切なかったと記憶している。

次に、被告人質問へと移った。「彼」が証言台に立った時、弁護士は敢えて、処分された犬の話を尋ねた。その瞬間、「彼」は堰を切ったように泣き始めた。

「自分が捕まっていなければ、犬をどうにかして処分されないようにできたはずだ。捕まったことで、取り返しのつかないことになってしまった」。彼は嗚咽をこらえながら、二度とこのようなことはしないと誓った。そして、母親にも裁判所に来るような迷惑をかけたことを詫び、今は金がないが、仕事をしたり行政に相談をして生活を安定させ、いつか必ず被害弁償をしたいと語った。彼の言葉は、法廷に静かに響き渡り、傍聴席の誰もが、彼の心からの悔恨を感じ取った。

第四章:静寂の別れ、記憶の片隅

一週間か二週間後、判決が下された。結果は、執行猶予付きの懲役刑。彼は釈放され、自由の身となって帰っていった。弁護士は、それきり「彼」や彼の母親と会うことはなかった。

しばらくして、彼らが住んでいた公園について、耳にする機会があった。ホームレスの一斉退去作業が行われ、公園からは彼らの姿が消えたと。彼らが行政の助けを得て、どこか新しい場所で、ささやかながらも安寧を得られていることを願うばかりだった。

その後、弁護士は他にもホームレスの窃盗事件の国選弁護を担当することがあった。しかし、「彼」以外のほとんどは、独り身で前科もあり、刑務所行きがほぼ確定しているような事案ばかりだった。彼のように、母親に会いに行くようなことは、二度としなかった。

だからこそ、この事件は弁護士の心に深く刻まれている。貧しさの淵で、それでも互いを想い、小さな命を慈しんだ母子の物語。そして、彼らが踏み入れた過ちに対し、社会が、人が、どのような眼差しを向けるべきか。あの日の法廷で、犬の死を悔やんで泣き崩れた「彼」の姿と、ひらがなで署名した母親の小さな手が、今も、彼の胸の片隅に静かに息づいていた。


 瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一

2025年7月14日月曜日

【解決事例】病院のgoogle口コミ、病院関連の口コミサイトに投稿された悪評の削除事例

 1 事案

 病院で患者、患者の親族が病院での診療に関する口コミを投稿。口コミ内容が診療に関する悪評価で、思い込み、主観によるところが大きく、投稿の表現も過激であった。

 google口コミも自動転載する口コミサイトにも掲載され、当該口コミ投稿があってから、明らかに病院の売上、来院者数が減少。

 口コミ投稿前に、当該患者関係者には病院から診療に関する患者の主張に対する説明等を行ったが、投稿が繰り返された。

 当該口コミを削除したい。

2 対応


  投稿者の実名は口コミに投稿されていませんでしたが、従前のやりとりから患者はわかっていました。患者の親族(同居)が投稿したであろうと思われましたが、患者とその親族宛に、文書を送付しました。

 内容は、投稿に記載された内容についての丁寧な説明、医学的説明、客観的事実を異なる部分の指摘、患者の気分を害された病院の対応の謝罪、投稿により病院に多大な損害がでていること、口コミ投稿の削除のお願い等です。

  本来的には、病院(医師)と患者・患者関係者が診療の際に十分に時間をとって話し合いや説明を行い、患者らと病院(医師)の信頼関係のもとに診療がされるというのが医療の在り方と思いますが、これが当事者の性格や時間の取れなさなどいろいろな事情により実現されないとこのような紛争を生みます。

  裁判所の手続を使った削除は批評については削除基準がかなり厳しい(削除されないことが多い)ので、まずは、当事者間で相互の考えを理解しあって円満に解決することが望ましく、弁護士は第1にその手助けをするという発想で対応をしたほうが解決になることが多いです。

  その口コミが削除されてもまた同じような口コミが投稿されればいたちごっこですし、投稿者の思いを病院が受け止めつつ、(病院からお願いをして)自発的に削除してもらうのが一番かと思います。

 上記のように対応をした結果、投稿者には、google口コミを削除してもらえ、病院関連の口コミサイトに対してもgoogleの口コミが削除されていることを理由として削除要請をして削除をしてもらいました。

 ただ、こういった事象は病院(医師)のコミュニケーション不足によることが原因のこともあり、原因からかえていないといけない場合もあるようです。

瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一

2025年7月10日木曜日

インターネット被害に特化した顧問契約

  

 以下の通り、インターネット上の風評被害やその防止に特化した事業者様の顧問契約を承っています。(法人または個人事業主を想定)

1 顧問料・契約期間

 月額(契約期間:12ヶ月)/ 49500円 (税込)~


2 内容

 ① 法律相談

 ネット上の名誉毀損や風評対策に関する相談に限り、別途の費用なく対応します。

 ② 検索サイトにおける関連ワードの風評監視

    Google・Yahooの検索サイトにおいて、事前に定めたワードでの、検索結果(サジェスト、虫眼鏡など)を営業日ごとにモニタリング・監視します。

 ネガティブな結果が表示されていないか監視し、いち早く被害を確認することが可能になります。

 ③ 特に風評記事が投稿されやすいサイトの監視

  Google口コミや各種業界の口コミサイト、その他特に風 評記事が投稿されやすいサイト(事前に協議したもの)について、営業日ごとにモニタリング・監視します。

 ネガティブな情報が掲載されていないか監視し、いち早く被害を確認することが可能です。

 ④ 削除対応の特別設定料金

  ②③で見つかった記事については、顧問先による特別料金にて削除を行います。


※実費費用については、顧問会社様・御依頼者様にご負担いただきます。


瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一

【期間限定】爆サイに対する削除請求の弁護士費用(特別料金設定)

  


爆サイ(バクサイ、爆サイ.COM)の削除請求について、爆サイの運営者の指定があったことに伴って、以下の通り、爆サイの記事削除について、特別の弁護士費用の設定をいたします。

1 任意(訴訟外)の削除要請

  1~10(レス)まで 

  着手金11万円(消費税込)

  ※御依頼スタート時にお支払いいただきます。

  報酬金  なし


2 任意(訴訟外)の削除要請(完全成功報酬制の場合)

  1レスあたり 報酬金3万3000円(消費税込)

  ※但し3レス以上からの御依頼になります。


3 訴訟提起による削除(上記1または2を取った後で)

  着手金 33万円(消費税込)

  報酬金 なし

  ※福岡在住で福岡地裁本庁が管轄となる方の場合


 当該御依頼を検討される方の初回の相談・お打ち合わせは、無料です。

 期間は3か月程度を想定していますが、本記事が当サイトに掲載されている間は、継続いたします。


瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一

2025年7月7日月曜日

爆サイに対する削除、開示請求

1 爆サイ( https://bakusai.com/)は、現在は⽉間11億PV、MAU1500万⼈、1⽇投稿数約70万回、総クチコミ数約11億回までに成⻑したという。

 掲示板サイトでは日本一とうたっているようで、ネット掲示板の相談でも最近は5chよりも爆サイのほうが多いようです。

2 爆サイは、従前は、運営会社を公開しておらず、一方で、削除や投稿のIP情報等の開示については、裁判をしなくても、削除や開示をしてくれることがおおかったので、裁判手続を利用せずに対応することが多かったです。

3 しかし、爆サイが成長するにしたがって、削除や開示の請求件数も多くなったためと思われますが、昔は、数日で対応してもらっていたのが→14日以内の対応→14営業日(土日含まず)以内での対応→60日以内の対応と、だんだん対応を遅くなっていました。

 開示請求については、携帯電話会社がログをほぼ3か月分しかもっていないため、IP情報の開示が遅くなると特定できないということになります。投稿があってから1ヶ月で弁護士に相談にきても、弁護士が1日で開示の書類をまとめて対応をしても、爆サイが開示に60日もかかると、3か月間が経過してしまって、携帯電話会社を利用した通信だと特定できなくなります。

 このような害がおきるようになったことから、裁判所をつかった手続により一定の強制力のある対応が必要になりました。

4 これまで爆サイの運営会社が公開されておらず、裁判手続きがとりにくかったのですが、令和7年5月30日に総務省が、「情報流通プラットフォーム対処法第20条第1項に基づく 大規模特定電気通信役務提供者の指定」として、株式会社湘南西武ホームが、爆サイ.comの運営者であるとしましたので、裁判手続がほかの通信会社と同様に容易になりました。

5 一方で、これまで裁判手続となるような紛争をさけようとしていたためか爆サイの開示や削除の判断はゆるやか(他社よりも対応してもらいやすい)であったのですが、裁判手続が容易になったためか、判断が厳しくなったという話も耳にします。

6 いずれにせよ、対応の選択肢が増えたことはよいことです。爆サイで誹謗中傷・名誉毀損やプライバシー侵害等の被害を受けた方で、削除や犯人の特定をしたい方は、瀬戸法律事務所までご相談ください。

 ご本人が開示や削除の申立を爆サイにしたが駄目だったという場合でも、弁護士から(要件や理由を明らかにして)請求をした場合には開示や削除がなされたという例も多くあります。

瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一