2016年10月18日火曜日

過払金の時効(CMの嘘)

 テレビCMを多く流している法律事務所のCMでは,「過払金請求には期限があります。」「時効は10年です。」「過払金返還請求が認められてから今年で10年です」「お急ぎください」というような内容を話しています。
 これを聞くと,一般の人は,今年までしか請求できないのではないかと思うのではないでしょうか。
 法律家ではない,私の友人や親族に話をきいたところ,ほとんどの人が,今年までの請求というように受け取っていました。
 
 過払金返還請求については,1連の取引については,最終取引時点から,10年で消滅時効にかかるとされており,期限があることや時効が10年であること自体は,そのとおりなのですが,今年までということはありません。

 過払金返還請求自体が判例上認められていたのは,ずっと以前からです。
 平成18年とは,各消費者金融が契約上利用していた期限の利益喪失約款があることで,みなし弁済の適用がほとんど認められないという最高裁判例が出た年で,それまでは,過払金返還請求訴訟を起こすと必ずでていたみなし弁済の抗弁(貸金業者の反論)が使えなくなったため,貸金業者が裁判外での過払金返還請求に応じるようになったという変化があったにすぎません。

 取引がずっと続いていれば,最終取引から10年間過払金請求できますが,途中で契約切り替えや完済・再度契約後取引開始などしていると,複数の取引と判断され,以前の分の過払金につては,その時点から10年の時効にかかってしまいます。
 
 ですから,請求は早いに越したことはないのですが,一般人に誤解を与えて,せかすような内容のCMは,よくないと思いますし,弁護士職務基本規定違反になりそうだなと感じたりしています。

2016年10月13日木曜日

相続,事業承継問題

 相続や事業承継に関する相談も最近多くなってきているが,相続や事業承継に関する問題は,関係当事者間で思いや希望が異なり,また,案件ごとに事情がことなるので,基本的には,事情をお聞きしてから,個別のプランを作成して提案することになります。

 しかしながら,相続や事業承継について,どうしていいかわからず,弁護士に相談にいくという発想にもいたらない方に対しては,事前に,いくつかのプランをパッケージとして告知し,御相談いただいた後に,個別事情を考慮した変更を加えるというような提案のしかたのほうがわかりやすく,気軽に御相談いただけるのではないかと思うようになりました。

 相続,事業承継に関しては,①もめたくない,②死んだあとにきちんと自分の思うとおりになってほしい,③お墓の管理をきちんとしてほしい,④節税,という希望が多く,これらを満たすために,様々な方法(信託,生前贈与,遺言,保険,不動産の処理など)があります。

 このような希望があるときはこのような方法がありますというようなパッケージプランをわかりやすく提示できるように,現在,案内資料を作成しています。完成しましたら,HP上に掲載したいと思います。

残業代請求

 ニュースでは過払請求の後は,残業代請求が増えるなどととりあげられているが,残業代請求は,過払請求と違って,以下の点があるので,過払請求のかわりになるほど請求が増えるということはないと思われます。

1 請求のための労働時間に関する資料がない,または,資料があっても労働時間の算出が困難

 過払請求は,金融機関が取引履歴を開示してくれましたが,残業代請求では,タイムカード等の労働時間を明確に示すものがなく(あっても実態を反映していない),パソコンのログイン時刻や会社のセキュリティロック時刻,日報,メールなどから労働時間を算出しないといけないので,1事件ごとに処理方法が異なります。
 このため,定型的な処理がしにくいという差があります。

2 残業代請求に耐えられない会社もある
  財務状況がしっかりしている会社ならいいですが,2,3人が 残業代請求をすると会社のキャッシュフローが回らなくなるようなところもあります。
  法律上の請求はできても,実際に回収できなくなることも考えられ,会社がつぶれると困ると言う場合は,低額の和解をせざるを得ない場合も出てきます。

3 勤務を継続したままでは,請求がしにくい。
  残業代請求は,法律上当然の権利行使ですが,会社によっては,「言うことをきかない奴」という印象をいただき,仕事を継続するにあたって有形無形の支障が出る可能性があることは否定できません。
  もちろん,残業代請求をしたことで,不利益を与えることは許されず,そのようなことがあれば損害賠償できますが,現実に支障がでる可能性があり,損害賠償請求のためには明確な証拠が必要なため,やはり,一定の覚悟が必要かと思います。
  このため,仕事を続けながらの残業代請求のハードルは高く,請求をためらうことになります。

4 消滅時効が2年
  雇用契約の報酬(給与)の消滅時効は請求できるとき(通常の支払日)から2年で消滅時効にかかるものとされており,請求時から2年分の残業代しか請求できないとされています。
  長期間,残業が発生していたとしても,2年分までしか請求できないため,過払請求より,請求額が低いこともあります。
  
以上のような差がありますが,人によっては,残業代だけで,1月20万円以上あり,2年分で500万円近い請求ができる場合もありますので,残業代請求を考えている方は,まず,弁護士に相談されることをおすすめします(会社と直接交渉する場合でも,残業代請求の証拠を事前に集めておくなどのアドバイスを弁護士から受けてからのほうがよいです)


2016年10月6日木曜日

名誉毀損の書き込みについての損害賠償額

 名誉毀損の書き込みについての損害賠償は,概ね,慰謝料と発信者特定にかかった弁護士費用でしょうが,裁判で判決となった場合の認容額は,書き込みの内容や回数,あとは判断をする裁判官によっても変動します。

 従来は,名誉毀損の慰謝料は100万円を超えないといわれてきましたが,近時は,100万円を超える判断をする裁判例もちらほらでているようです。
 昔は,離婚の慰謝料は200万円を超えないといわれていましたが,近時は200万円を超える判断もあるように,慰謝料に関する裁判官の考え方も少しづつかわってきているようです。

 損害賠償額が多い方の事例と思われますが,
大津地裁彦根支部の平成27年1月22日判決(確定したかは不明です)では,インターネット上の掲示板に書き込みがなされ,名誉や名誉感情の毀損及びプライバシー権侵害による損害賠償を求めた事案(請求額 慰謝料400万円 発信者特定のための弁護士費用約87万円)で,慰謝料150万円,発信者特定のための弁護士費用45万円の合計195万円が認められています。

 一方,請求する相手に資力がないと,判決をとっても,回収できないことになりますが,事前に相手方の資力がわからないことが多く,難しいところです。

2016年9月28日水曜日

解決事例4(発信者情報開示請求後,加害者との和解)

 掲示板の運営者に,権利侵害の書き込みについて,IPアドレス等の発信者特定情報を開示してもらった後,そのIPアドレスから判明するプロバイダ等に,訴訟外での(任意の)発信者情報開示請求をすることになります。

 この段階で,プロバイダ等は,ガイドラインにより,各発信者(契約者)に対して,発信者情報開示請求がなされていることの通知と,契約者情報を開示してよいかの質問をします。
 この時に,発信者(契約者)が開示してよいとの回答をすると,基本的に,発信者情報の開示がなされることになりますが,このようなことはほとんどありません。
 このため,すぐに,発信者情報開示請求訴訟を提起することになります。

 一方,プロバイダ等から発信者情報開示請求がなされたとの通知をうけた発信者は,その時点で,弁護士等に相談にいくことも少なくありません。

 そして,相談にいくと,いずれ発信者情報の開示がなされる可能性が高いであろうことなどを聞き,弁護士を通じてや直接本人が,開示請求を行った代理人へ和解の連絡をしてくることも,ままあります。

 そのようにして,発信者情報開示請求訴訟を経ずに,和解交渉が行われ,比較的早期に,和解解決がなされる場合があります。

 このような早期の解決がなされることが理想的ですが,このような解決がなされるのはかなり少ないという印象です。

2016年9月6日火曜日

発信者情報開示後(書き込みをした者が判明した後)の対応について

 発信者情報開示請求訴訟の判決後(認容判決),ほとんどのプロバイダ等からは,任意の(執行手続きを要せずに)開示があります。

 発信者情報の開示は,契約者名,住所が開示されることがあり,メールアドレスは開示されないことがほとんどですが,
住所と契約者名があれば,賠償請求をするには十分です。
 契約者名が法人の場合は,登記簿をとって,会社の素性や代表者名を調べますが,多くの場合,被害者の知り合いが書き込みをしています。

 弁護士を通じて,損害賠償をしてもよいですし,相手が知人であることから,みずから話をしてもよいでしょうが,話がまとまらない場合は,損害賠償請求訴訟をすることになります。

 その場合,書き込みをされたという慰謝料に加えて,加害者を特定するためにかかった費用(弁護士費用)も損害に加えて請求します。
 加害者を特定するためにかかった費用のうち,相当な額については,下級審判例で,これを損害に含めるという判断がありますし,私見ではありますが,近時はだいたい認められるのではないかと思います。

 不法行為の相手を特定するためにかかった探偵費用についても相当な額は,損害に含めるという下級審判例が一般化していると思いますので,同じ論理で,発信者特定に要した弁護士費用も損害に含まれると考えられます。


2016年8月31日水曜日

解決事例3(権利侵害の書き込みをした人(加害者)からの削除要請)

 通常,インターネット上の書き込みで,削除をしてほしいという御相談,御依頼は,権利を侵害された人(被害者)ですが,まれに,書き込みをした人(加害者)からの削除の御相談・御依頼があります。

 書き込みをした人(加害者)は,書いたものの,それが権利侵害(名誉毀損,プライバシー権侵害など)であることを自覚,またはその可能性があると考えて,消したいと思ったが,電子掲示板に一度書いてしまうと,自分の意思では消すことができない(削除パスワードを設定していなかった場合なども含む)ため,御相談・御依頼に来られるようです。

 書き込みを削除することができると,書き込みのIPアドレス等発信者特定情報が消えるところが多く,事実上,被害者から損害賠償請求を受けない効果が期待できます。また,損害賠償を受けたとしても,書き込みが削除済みであると,残っているより低額で済むことになります。

 しかしながら,プロバイダ責任制限法や同法に準拠するガイドラインによる削除要請は,被害者からの請求によるもので,加害者からの削除要請は,予定されていません。

 すなわち,加害者からの削除要請は,法律に基づかない,掲示板運営者に対する単なる「お願い」にすぎません。
 このため,加害者からの削除要請については,削除されない可能性が十分あります。

 一方,各電子掲示板運営者は,各自で,運営規則(削除要件)を定めているところが多く,この運営規則(削除要件)に該当することを具体的に指摘して削除要請をすると,削除に応じてくれることも少なくないです。

 一般の方の削除要請は,削除理由として,この運営規則(削除要件)に該当するという内容がない,または,ほとんど書かれていないため,削除が認められないのです。

 書き込みをしたある方は,自分で,複数の書き込みの削除要請を掲示板運営者に出したが,全部,削除されないままであったため,当職に削除要請をするよう御依頼されました。

 当職が,掲示板運営者に対し,運営規則(削除要件)に該当するという内容と掲示板運営者が削除しようと思うようなあることを記載して,削除要請をだしたところ,削除要請をした書き込みの8割以上が削除されました。

 加害者からの削除要請については,作業量の関係で,通常の被害者からの削除要請よりも,弁護士費用は高くならざるをえませんが,それでも,被害者が発信者情報開示請求をして特定をされて損害賠償請求されるよりも(発信者特定のための費用は損害賠償請求における損害に含まれるという下級審判例があり,一般化しつつあります)低額の支出ですむと思われます。
 
 

2016年8月17日水曜日

発信者情報開示請求3-2(ホストラブ,ホスラブの運営者について)

 ホストラブ(ホスラブ)に書き込みをされて被害をうけた方から御依頼を受けた件で,依頼者様からよく聞く話は,「ほかの弁護士に相談をしたが,ホストラブ(ホスラブ)は,海外の会社が運営をしているから,裁判もできないため,手のうちようがないと言われた」というものです。

 ホストラブ(ホスラブ)の運営者(運営会社)は,当該掲示板内に表示がないため,探すことは容易ではありません。
 
 通常は,ドメインのwhois情報を参照して,運営会社を特定するのですが,ホストラブは海外の会社の登録代行を使用していると思われ,whois情報からは,海外の登録代行会社が判明するだけです。

 海外への照会を行っているうちに,通常は3か月以上は経過するものと思われますので,発信者情報開示請求ができないことになり,大半の法律事務所に依頼をしても,ホストラブ(ホスラブ)については,発信者情報開示請求で,発信者の特定はできないことになると思われます。

 このため,ネット関連の事件を多く取り扱っていない弁護士であれば,このように言うこともままあると思われます。
 
 しかしながら,当事務所では,ホストラブ(ホスラブ)のサーバー管理会社及び運営者(運営会社)がどこであるか,その調査方法(仮処分における疎明資料の収集)も熟知しており,迅速な仮処分申立が可能となっております。(これについてはノウハウの部類に属しますので,申し訳ありませんが,お話しできません)

 運営者(運営会社)は東京にある日本法人のため,東京地裁にて,仮処分申立をして,IPアドレス等の開示請求をすることが可能です。

 ホストラブ(ホスラブ)に対する発信者情報開示請求や記事の削除要請については,実績のある当事務所に御依頼ください。

発信者情報開示請求の時間的制限(ネット記事被害で損害賠償請求する場合の時間的制限)

 インターネット上に掲載された記事(コメント,レス)で,被害(名誉毀損,プライバシー権侵害など)を受けた場合,発信者情報開示請求をして,書いた人を特定し,その上,で書いた人に損害賠償をすることになります。

 しかし,発信者情報開示請求をして書いた人を特定するためには,時間的制限があります。

 これは,発信者情報開示請求の手続きが,①記事がかかれた掲示板の運営者に,書き込みをおこなった者のIPアドレス等の開示を求める,②開示されたIPアドレスをもとに,キャリア(ドコモ,AU,ソフトバンク)やプロバイダ(OCN,NIFTYなど)に契約者情報を求めるという2段階の手続きを踏む必要があり,特に②のほうのデータが残っている期間が短いからです。

 キャリア(ドコモ,AU,ソフトバンク)のログ保存期間は,概ね3ヶ月間とされているようですし,国内プロバイダも3か月間~6か月間としているところが多いようですので,書き込みが行われてから3か月経過していると,かなり賠償請求は難しい,6か月経過しているとほぼ可能性がないと考えられます。

 また,掲示板運営者にIPアドレスの開示を求めてから,開示があるまでに,2~3週間かかることもありますので,書き込みが行われてから2か月が経過していると,手続に要する期間を考慮すると,請求が極めて困難ということになります。

 このように,ネット上の記事で被害をうけた場合は,後で,賠償請求をすることは難しいため,すぐに,弁護士に相談にいくようにおすすめします。

2016年7月15日金曜日

司法書士に支払った過払金回収の依頼料を取り戻せる場合(最高裁平成28年6月29日判決)

平成28年6月27日  最高裁判所第一小法廷 判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85969
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/969/085969_hanrei.pdf

 認定司法書士という,訴額140万円以下の紛争について,弁護士業務と同じ業務を行える(通常は,紛争の解決の業務は弁護士しか行えない。行うと弁護士法違反となり,刑事罰もある)司法書士がいます。
 
 この訴額140万円以下の紛争という意味について,債務整理,過払金返還請求では,どの範囲となるのかについて,司法書士側,弁護士会側で見解が分かれていました。
 
 最高裁判所は,基準の明確化が依頼者の利益に資するとして,債務整理の場合,個別の債権ごとに,請求額が140万円以下の場合,認定司法書士の権限に属し,そうでない場合は,業務を行うことができないとしました。

 そして,業務を行うことができない場合は,違法な業務を行って,報酬を得たのであるから,その報酬については,返還義務を負うとしました。

 このため,司法書士に債務整理を依頼し,ある会社について,請求額が140万円以上あった方については,その司法書士に支払った報酬(他の業務との関係で一部の場合もあり,全部の場合もある)の返還を求めることができます。

 私の聞く限りでは,過払金請求の業務を行う認定司法書士事務所の多くは,高額の(弁護士一般が定める平均的な報酬基準より高額の)報酬をとっていたようですので,司法書士に依頼をしていた方で,報酬に不服のある方は,依頼した債務整理の請求額を確認した上で,報酬返還請求されるとよいでしょう。
 請求できるかわからない方は,お近くの弁護士に,ご相談されるとよいでしょう。



発信者情報開示の相談前に集めておくべき証拠について

 発信者情報開示の御相談,御依頼を受けることが多くなってきましたが,御相談前に,依頼者のほうで集めておくべき証拠について,お話ししたいと思います。

 まずは,開示をもとめたいネット上の記事自体です。電子掲示板への書き込みであれば,該当のレスとその前後のレスを印刷しておく必要があります。
 依頼者または他人の依頼により,相談時には,ネット上の記事が削除されていることもあります。記事と一緒に発信者の特定情報(電子ログ)も削除されていれば発信者情報開示できませんが,掲示板のシステムによっては残っている場合もありますので,保存できるときに保存しておくと安心です。

 つぎに,開示を求めたいネット上の記事の内容が虚偽,嘘であれば,虚偽,嘘であるということがはっきりわかる証拠(書類)などあれば,それも,早めに集めておくとよいです。

 ご相談が比較的多い,風俗にお勤めの方の氏名,住所等が記載された場合は,源氏名を使用されていることが多いですので,ご自身(実名表記)がどの名前の店で,どの名前(源氏名)で仕事をしているのかがわかる資料(書類)を準備する必要があります。(御相談者自身の権利侵害であることを立証するために証拠になります)


 通常は,このような資料を持っていることはないと思いますので,勤めているお店に頼んで,在籍証明書(実名,店舗名,源氏名,在籍時期を記載した,お店の運営者の印鑑のある書面)を発行してもらうようにします。
 雇用契約書や給与明細書も一部代わりにはなりえますが,実名か源氏名のどちらかしか記載されていないと思いますので,在籍証明書を発行してもらうのが一番かと思います。


2016年7月8日金曜日

解決事例2(個人経営の事業の誹謗中傷をするスレッド全体の削除例)

 ある電子掲示板において,個人経営の事業に関するスレッドがたてられていました。
 
 スレッド作成者自体が,このお店や代表者に敵意をもっているようで,当該スレッド内のレスの多くは,誹謗中傷でしたが,名誉毀損とまでいえるものは,全体の中で1,2割程度でした。
 
 しかし,スレッド全体が,このお店や代表者の誹謗中傷を内容とするものであり,依頼者は,スレッド全体の削除を希望していました。
 
 プロバイダ責任制限法に基づくガイドラインによる削除請求では,一般的に,権利侵害がある個別のレスの削除しかできないことになっています。
 
 しかしながら,この電子掲示板のシステムを利用し,電子掲示板管理者にある部分の削除を請求することにより,スレッド全体の削除(非表示)を達成することができ,依頼者の希望に沿うことができました。
 
 この方法については,ある程度,ネット掲示板の知識のある弁護士であれば知っていることですが,電子掲示板のシステム次第でできない場合も多くありますため,削除を希望される方は,ITに詳しい弁護士に御依頼ください。
 そして,できれば,当事務所をよろしくお願いいたします。
 

解決事例1(性風俗従事者が自己の氏名,住所等のプライバシー情報を掲載された場合)

 性風俗関連については,いろいろな電子掲示板上で,特定のお店や特定の性風俗嬢に関する話題が取り上げられています。
 一方,性風俗業に従事する女性(性風俗嬢)は,一般に,このような仕事をしていることを近親者・知人に知られてたくないと考え,また,ストーカー被害を避けるため,自己の氏名や住所,連絡先等のプライバシー情報を隠して,仕事をしています。
 このように,性風俗嬢が,自己の氏名や氏名や住所,連絡先等のプライバシー情報を,他人に秘匿したいという利益は保護されるべきであり,これをみだりに電子掲示板上に記載する行為は,権利侵害行為として違法となると考えられます。

 発信者情報開示請求訴訟においても,個人が特定できるような形で,性風俗嬢の氏名や住所等が記載された場合は,権利侵害を認め,発信者情報が開示されるということが一般化しつつあるようです。

 一方,記載内容から,個人が明確に特定されるとはいえない場合には,権利侵害があるか微妙になります。
 プロバイダ責任制限法の発信者情報開示請求の条項は,「権利侵害が明らか」な場合に開示を認めるとなっており,権利侵害を裁判所に認めてもらえないと,発信者情報開示請求訴訟で敗訴となってしまいます。
 
 当事務所で取り扱った案件ですが,依頼者(性風俗業従事者)の実名(フルネーム)でもない,住所でもない情報(しかし,依頼者にたどり着く可能性のある情報)が電子掲示板に掲載された事案で,依頼者にたどり着く可能性が具体的にあること,その場合に依頼者に多大な損害があることなどを,丁寧に,主張,立証し,発信者情報開示請求訴訟において,認容判決を得,プロバイダに発信者情報を開示してもらうことができました。

発信者情報開示請求6(発信者情報開示請求訴訟2)

 発信者情報開示請求訴訟を行った場合,相手プロバイダやキャリアが発信者に対して行った照会で具体的反論がでない限り,相手プロバイダやキャリアが内容について具体的に争ってくることはあまりありません。
 一方,形式的な反論(当該通信が書き込みにかかる通信かは不明,権利侵害が明らかではないなど)はしてきますので,発信者情報開示請求の要件を全部満たす内容の証拠を付ける必要があります。
 この意味で,発信者情報開示請求訴訟は,裁判所を使った開示の許可手続の性質であるといえるでしょう。
 早ければ,第1回期日(訴状記載の主張,答弁書での反論),第2回期日(開示請求者(原告)の再反論)の2回で,審理は終結し,第3回期日に判決ということになります。
 そして,認容判決が出されると,相手プロバイダやキャリアは,遅くとも判決確定をまって(確定前に開示してくるところもあります),発信者情報を開示してきます。

2016年6月24日金曜日

発信者情報開示請求5(発信者情報開示請求訴訟1)

 プロバイダやキャリアに対して,訴訟外での発信者情報開示請求を行っても,ほとんどの場合,開示されることはありません。
 これは,プロバイダ責任制限法が,開示をした場合の免責条項を設けていないためと考えられます。逆に開示をしなかった場合については,悪意や重過失ない限り損害賠償義務を否定しており,開示をしないほうが無難という状況がつくられています。
 このため,裁判上で開示が認められない限り開示をしないという取扱いが定着しており,訴訟を起こすことになります。

 発信者情報開示請求訴訟を起こす場合,プロバイダ責任制限法に特段の定めがないため,裁判は相手プロバイダ,キャリアの本店所在地を管轄する裁判所に提訴することになります。
 ほとんどの場合,東京地裁ということになります。
 関東以外に在住する被害者は,自分で提訴するにしても,弁護士に依頼するにしても,手間と費用がかかることになります。
 相手プロバイダ,キャリアに対する損害賠償請求とあわせて被害者(依頼者)の住所地を管轄する裁判所で提訴することも考えられますが,移送を申し立てられると,現状では,高確率で東京地裁に移送される結果となるようです。

2016年3月29日火曜日

インターネット上の書き込みの削除請求・削除要請(大島てるの場合)

 「大島てる」という不動産の事故物件公示サイトとうたっているサイトがある。
 ここでいう事故情報とは,自殺,他殺,事故死があった不動産のことをさすらしい。
 現在は,日本全国の物件の情報の記載がある。
 サイト運営者(社)自身が独自のソースをもとに記載した事故情報とそれ以外の一般人が書き込みをした情報とが記載されている。
 一般人が書き込みできることから,虚偽の内容を記載されることもあり,それを見た一般人は事故(自殺,他殺,事故死)があったものと思うので,一般に,物件の価値が下がるという被害が生じる。
 このため,そのような虚偽の情報については,削除請求・削除要請をしたいという依頼者もいる。
 削除請求・削除要請については,大島てるのほうで,書き込みに明確な根拠がないと判断した場合は,すぐに削除をしてくれるようである。
 


発信者情報開示請求4(発信者契約のプロバイダへの発信者情報開示)

 電子掲示板運営者から発信者特定のためのIPアドレスやタイムスタンプを開示してもらったら,次は,そのIPアドレスを管理するプロバイダへの発信者情報開示請求をすることになります。

 IPアドレスを管理するプロバイダは,インターネット上のWHOIS情報を確認して,調べます。

 このようにして調べたプロバイダが,ドコモ,AU,ソフトバンクなどの携帯電話会社であったり,有名なインターネット接続プロバイダであったりした場合,発信者が契約をしているプロバイダとなっている可能性が高く,このプロバイダに発信者の契約情報の開示を求めることになります。

 しかしながら,上記の携帯電話会社や国内の有名プロバイダは,訴訟外での発信者情報開示請求にほとんど応じないのが現状です。
 このため,発信者情報開示請求訴訟を提起する必要があります。
 

2016年1月27日水曜日

過払金返還請求訴訟3-2(過払金充当合意)

 一連計算が認められるか否かは,最高裁は,発生した過払金債権とその後に借り入れた借入金債務について,過払金充当合意が認められるか否かで判断をしています。
 
 そして,①基本契約が存在し,その基本契約内での取引の場合

最高裁判所第一小法廷平成19年6月7日判決民集 第61巻4号1537頁
 「本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制 限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁 済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債 務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を 含んでいるものと解するのが相当である。」
として,過払金充当合意が基本的に認められるとしています。
 
 逆に②基本契約が存在しない場合,基本契約が別の取引である場合,
(最高裁判所第三小法廷 平成19年2月13日民集 第61巻1号182頁)
 「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに 係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本 に充当すると過払金が発生し(以下,この過払金を「第1貸付け過払金」とい う。),その後,同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したと きには,その貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが 繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,そ の貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段 の事情のない限り,第1貸付け過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2 の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務に は充当されないと解するのが相当である。」
として,原則として過払金充当合意が認められないとしています。
 一方,この場合でも,
(最高裁判所第二小法廷 平成20年1月18日民集 第62巻1号28頁)
 「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間にお
ける貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。」
 として,例外的に過払金充当合意が認められるとしています。

 なお,当初締結した基本契約に自動更新条項があっても,その後に別個の基本契約を締結(基本契約書の作成)があれば,別個の基本契約として取り扱う(当然に過払金充当合意は認められず,前記の各要件の検討を行う)としています。(最高裁判所第一小法廷平成23年7月14日集民 第237号263頁)

 また, 基本契約がない場合でも,「同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずにされた多数回の金銭の貸付けが,1度の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており,その1度の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであり,上記各貸付けは1個の連続した貸付取引と解すべきものであるという判示の事情の下においては,各貸付けに係る金銭消費貸借契約は,各貸付けに基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」(最高裁判所第一小法廷平成19年7月19日 民集 第61巻5号2175頁)
として,過払金充当合意が認められるとする場合もあります。

2016年1月26日火曜日

発信者情報開示請求3(ホストラブ,ホスラブ)

ホストラブ(ホスラブ)の場合

 ホストラブ(通称ホスラブ)は,全国の各地方ごとの掲示板があり,さらに各地方ごとの掲示板の中に,ホスト,キャバクラ・クラブ,風俗など様々なジャンルで区分けがなされています。

 ホストラブに権利侵害内容の書き込みがなされた場合,
訴訟外で発信者情報開示請求をしても,回答を得ることはかなり難しいです。
 この場合,ホストラブに対する発信者情報開示請求については,裁判所の仮処分手続を利用することになります。
 この発信者情報開示請求仮処分については,東京地裁で行うことになるため,東京在住の方以外は,旅費,日当,弁護士費用等,相当な金額が必要になってきます。
 さらに,仮処分決定を出してもらう際には,少額(記載内容によるが10万円程度~)の担保金を法務局に供託する必要があります。
 
 仮処分手続を利用することから,一般の方は,弁護士に依頼をされたほうが良いと思われます。
 

2016年1月6日水曜日

過払金返還請求訴訟3-1(基本契約(契約の一体性))

 過払金の計算(算定)をするにあたって,一連で計算をするか,個別に計算をするのかという争点で,契約の一体性が問題となってくる。
 取引が同一期間に併存しない場合(取引中断型)を想定すると,
まず,①契約の個数(形式的個数)が問題にされる。
契約の個数は,原則として,基本契約の個数で判断され,前の基本契約と同一というような内容がない限りは,基本契約書が2通作成されていれば,契約の個数は2個とされる。
 この時点で,基本契約が1個であれば,原則として,取引中断期間があろうと,一連計算すべき(最高裁のいう過払金充当合意が継続している)ということになろう。
 「原則として」というのは,
・取引中断期間が5年超
・元の基本契約の継続(有効)期間が5年間
・取引再開時に新たな基本契約書の締結なし
という事案で,裁判所(下級審)は,一連の取引としない(分断)という判断がなされたことがあり,基本契約が1個(契約書が1枚しかない)としても例外がありうるためである。
 まあこの事案では,従前の基本契約はすでに終了しており,取引再開時に,新たな契約が成立した(契約書は作成されていなかった)という認定も可能なため,しかたないところであろうか。
 下級審判例をみると,基本契約1つで,取引中断期間3年程度でも一連計算の結論をとったものもあるため,私見では,基本契約の契約有効期間(年数)と取引中断期間の比較が,裁判所の一連計算の適否の判断要素となっているのではないかともおもわれる。
 

発信者情報開示請求2(爆サイ)

 爆サイ.COMの場合

 爆サイ.COMは,全国の各地方ごとの掲示板があり,
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 爆サイ.COMに権利侵害内容の書き込みがなされた場合,
爆サイ.COMの運営者宛てに,発信者情報開示請求(訴訟外での請求)をすると,権利侵害がある程度明確であれば,裁判によらなくとも,発信者特定情報(IPアドレス,タイムスタンプなど)の開示が得られます。
 しかしながら,個人が弁護士を通さずに開示請求をしても開示がなされなかった(開示請求の方法が悪い(必要事項が漏れている)などの理由も考えられます)という話もききますので,不安があれば弁護士に依頼したほうがよいかもしれません。
 また,裁判手続きを使わずに開示が得られる可能性が高いことから,比較的早期,比較的安価に手続きがすすめられるということになります。


新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

本年も充実したリーガルサービスのご提供ができるよう
精進していく所存ですので,
何卒よろしくお願い申し上げます。

平成28年 正月
瀬戸法律事務所