2014年9月5日金曜日

過払金返還請求訴訟1(みなし弁済規定)

 いくつかお問い合わせがあったので,過払金返還請求訴訟に関する論点(最高裁判例によって解決したものも含む。)を,これから,順に紹介していきたい。

 今回は,なぜ過払金が発生するのかという点で,利息制限法の規定と貸金業法のみなし弁済の規定について。

 そもそも,昭和29年から利息制限法はあり,金銭の消費貸借契約(お金の貸し借り)については,元本の額が10万円未満の場合 年2割,元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年18%,元本の額が100万円以上の場合 年15%までと決められていた。

 終戦直後くらいなので,経済状態も今と大きく異なるし,貨幣価値も異なっていたはずなので,この制限利率が改正されずに今まできたこと自体,どうなのかなと思うが,とりあえず,高金利で市民が生活できないようになるのを防ぐために,利息制限法ができ,それが残っていた。

 しかし,貸金業者の団体は,このような金利では利益がでないとして(昔は郵便局に定期でお金を預けると年利8%程度の複利で10年で2倍とかになっていた。お金を調達するにしても,それ以上の金利が必要で,金利10%で調達したお金で金貸しをしても,15~20%までしか金利がとれないとすると,利益幅が小さく,貸し倒れを考慮すると利益はさらに低くなる),営業としてする貸金業については,特例を定めるように,政府に要求した。
 そして,旧貸金業法43条のみなし弁済規定ができた。
 
みなし弁済規定は,以下のとおり。
(任意に支払つた場合のみなし弁済) 
第四十三条  貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法 (昭和二十九年法律第百号)第三条 の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が、同法第一条第一項 に定める利息の制限額を超える場合において、その支払が次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払は、同項 の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。 

これにより,貸金業者は,利息制限法の制限利息を超える約定利息を正当な利息であるとして受領していた。

しかし,消費者金融等からお金を借りて多重債務者となり,自殺をしたり,生活ができなくなっている人が多くでてきて,平成15年ころには,破産申立件数が全国で24万件余,借金が原因と思われる自殺者も約9000人となっていた。
このころの多重債務者は,300万人以上と言われていた。

みなし弁済の規定の要件は,いろいろありますが,多くの貸金業者は,貸金業法17条書面や18条書面を交付しておらず,要件を欠くとして,みなし弁済の適用が否定されてきました。
このような中で,最高裁は,平成18年1月13日判決で,期限の利益喪失約款がある契約では,利息の支払いを強制されており,みなし弁済の要件である任意の弁済にあたらないと判示した。

これにより,基本的に全部の貸金業者について,みなし弁済の適用がなくなった。期限の利益喪失約款を入れていない貸金業者はいないから。

このようにして,貸金業者が受け取った約定利率と,法律上受け取れる利息制限法の制限利率との差が生じて,過払金が生じることになる。

 

2014年9月1日月曜日

インターネット上での名誉棄損・誹謗中傷・プライバシー侵害の記事削除事例

 私が受任したインターネット上での名誉棄損・誹謗中傷・プライバシー侵害の記事削除事例を紹介します。

 事案は,ある会社について,その会社と社長の悪口がインターネット上の記事として複数掲載されてその記事を削除してほしいというものです。
 記事の内容を見てみると,かなりひどい名誉棄損表現,プライバシー侵害表現を含んでいました。
 書き込みをした者は特定できていましたが,当該記事が単なるwebページだけではなく,ブログ形式のページにも掲載されたため,他のサイトのブログ自動巡回,自動転載のシステムにのって,多数転載されていました。

 まず,これ以上の記事の増殖をなくすために,記事の掲載者に,警告書を送付し,これまで書いた記事の削除及び今後二度と記事を書かないこと,応じない場合は訴訟提起すること等を連絡しました。

 相手は,これに応じて,これまで書いた記事(ブログのものも含む)を全部削除し,新しい書き込みもなくなりました。

 その後,インターネット上から,当該記事を全部削除してほしいとの依頼者の希望があったため,googleで検索をすると約400件HITしましたが,こつこつとやっていくことにしました。
 まず,転載先のブログ記事について,転載先の管理者に対して,削除要請をしました。
 管理者が長く不在で,何度も文書連絡・メールを送付したり,転載先が外国のサイトで,外国人の管理者に英文で削除依頼をしたり,また,管理者の中には,なんで俺が書いてないのに削除しないといけないのか等と言ってくる人もいたりして,苦労もしました。
 しかし,数か月を要して全部の転載先の記事を削除することができました。

 記事を削除しても,googleにはキャッシュとして残っており,このキャッシュがあると,インターネット上でまだ記事を見ることができるので,記事削除した分について,1つ1つ,URLアドレスを入力して,googleのキャッシュの削除依頼をしました。

 また,googleのキャッシュが削除されても,googleに検索クエリ結果が残っており,検索結果に出てくることがあります。これを早く無くすために,googleに巡回を早くするよう要請することができ,これを定期的にしていました。

 このような結果,数か月後には,googleで検索して,削除対象であった記事が1件も出なくなりました。その後,何か月おきかにチェックをしていましたが,検索結果に出てくることはありませんでした。

 この事例は,相手が記事削除にすんなり応じてくれたため,裁判手続をせずにすみましたが,転載先を含めて記事削除を行ったため,かなりの作業量となりました。
 しかし,依頼者には,記事が全部なくなったことを非常に喜んでもらい,やった甲斐がありました。