2016年10月13日木曜日

残業代請求

 ニュースでは過払請求の後は,残業代請求が増えるなどととりあげられているが,残業代請求は,過払請求と違って,以下の点があるので,過払請求のかわりになるほど請求が増えるということはないと思われます。

1 請求のための労働時間に関する資料がない,または,資料があっても労働時間の算出が困難

 過払請求は,金融機関が取引履歴を開示してくれましたが,残業代請求では,タイムカード等の労働時間を明確に示すものがなく(あっても実態を反映していない),パソコンのログイン時刻や会社のセキュリティロック時刻,日報,メールなどから労働時間を算出しないといけないので,1事件ごとに処理方法が異なります。
 このため,定型的な処理がしにくいという差があります。

2 残業代請求に耐えられない会社もある
  財務状況がしっかりしている会社ならいいですが,2,3人が 残業代請求をすると会社のキャッシュフローが回らなくなるようなところもあります。
  法律上の請求はできても,実際に回収できなくなることも考えられ,会社がつぶれると困ると言う場合は,低額の和解をせざるを得ない場合も出てきます。

3 勤務を継続したままでは,請求がしにくい。
  残業代請求は,法律上当然の権利行使ですが,会社によっては,「言うことをきかない奴」という印象をいただき,仕事を継続するにあたって有形無形の支障が出る可能性があることは否定できません。
  もちろん,残業代請求をしたことで,不利益を与えることは許されず,そのようなことがあれば損害賠償できますが,現実に支障がでる可能性があり,損害賠償請求のためには明確な証拠が必要なため,やはり,一定の覚悟が必要かと思います。
  このため,仕事を続けながらの残業代請求のハードルは高く,請求をためらうことになります。

4 消滅時効が2年
  雇用契約の報酬(給与)の消滅時効は請求できるとき(通常の支払日)から2年で消滅時効にかかるものとされており,請求時から2年分の残業代しか請求できないとされています。
  長期間,残業が発生していたとしても,2年分までしか請求できないため,過払請求より,請求額が低いこともあります。
  
以上のような差がありますが,人によっては,残業代だけで,1月20万円以上あり,2年分で500万円近い請求ができる場合もありますので,残業代請求を考えている方は,まず,弁護士に相談されることをおすすめします(会社と直接交渉する場合でも,残業代請求の証拠を事前に集めておくなどのアドバイスを弁護士から受けてからのほうがよいです)


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