一連計算が認められるか否かは,最高裁は,発生した過払金債権とその後に借り入れた借入金債務について,過払金充当合意が認められるか否かで判断をしています。
そして,①基本契約が存在し,その基本契約内での取引の場合
(最高裁判所第一小法廷平成19年6月7日判決民集 第61巻4号1537頁)
「本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制
限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁
済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債
務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を
含んでいるものと解するのが相当である。」
として,過払金充当合意が基本的に認められるとしています。
逆に②基本契約が存在しない場合,基本契約が別の取引である場合,
(最高裁判所第三小法廷 平成19年2月13日民集 第61巻1号182頁)
「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに
係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本
に充当すると過払金が発生し(以下,この過払金を「第1貸付け過払金」とい
う。),その後,同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したと
きには,その貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが
繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,そ
の貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段
の事情のない限り,第1貸付け過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2
の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務に
は充当されないと解するのが相当である。」
として,原則として過払金充当合意が認められないとしています。
一方,この場合でも,
(最高裁判所第二小法廷 平成20年1月18日民集 第62巻1号28頁)
「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間にお
ける貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。」
として,例外的に過払金充当合意が認められるとしています。
なお,当初締結した基本契約に自動更新条項があっても,その後に別個の基本契約を締結(基本契約書の作成)があれば,別個の基本契約として取り扱う(当然に過払金充当合意は認められず,前記の各要件の検討を行う)としています。(最高裁判所第一小法廷平成23年7月14日集民 第237号263頁)
また, 基本契約がない場合でも,「同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずにされた多数回の金銭の貸付けが,1度の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており,その1度の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであり,上記各貸付けは1個の連続した貸付取引と解すべきものであるという判示の事情の下においては,各貸付けに係る金銭消費貸借契約は,各貸付けに基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」(最高裁判所第一小法廷平成19年7月19日 民集 第61巻5号2175頁)
として,過払金充当合意が認められるとする場合もあります。
0 件のコメント:
コメントを投稿