2025年6月30日月曜日

【解決事例】撮影のみ同意をして撮影した裸の動画を無許可でインターネット上に掲載された事案の損害賠償

 1 事案

 風俗店(デリヘル)に勤務する被害者Aさんは、加害者の客Bから何度も指名をうけ、オプションサービスであるサービス中の動画撮影をしていた。動画撮影は、客自身のみが楽しむためのものであり、第三者へ見せたりインターネット上など外部への掲載・漏洩は厳に禁じられておりBはこれに承諾して動画撮影サービスを利用していた。

 Aさんは、インターネット上の素人動画掲載サイトに自分の顔は映っていないものの自分とわかる(体のホクロやタトゥの位置、声色、その他)動画が複数掲載されているのを発見し、動画の削除と慰謝料等の損害賠償請求を希望した。

 なおAさんは同店でBにしか動画撮影サービスを提供していなかった。

2 対応

 警察に刑事告訴前提の被害相談を実施しました。

 同意を得て撮影した「性交又は性交類似行為に係る人の姿態」の動画のインターネット上での不特定多数への提供は、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」の私事性的画像記録提供罪(三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)に該当します。

 証拠の保全後、AさんがBの携帯電話番号及び実名を知っていたため、Bに対して、動画の削除及び損害賠償請求を求めました。

 Aさんの希望に沿って賠償請求を行い、相手にも代理人弁護士がつき、交渉を重ねた結果、賠償金200万円、動画のインターネット上からの削除、Bが保有するAさんの動画の全削除、インターネット上にAさんの動画が再度掲載、漏洩した場合の違約金、お店の利用及びAさんへの接触・連絡禁止、刑事告訴をしない・取下げる等の条件で示談をいたしました。

3 その他コメント

 相手の同意なく相手の裸や下着等を撮影する行為は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の性的姿態等撮影罪(三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金)で前述のものより処罰が重いです。

 同意を得て撮影をした性的な動画も、同意をえずにインターネット上にアップロードする(第三者が見る形で)と処罰の対象になりますので絶対にしないようにしないといけません。

 もともと密室で、外部に漏れない形で行われるべきサービスの類であり、その違反があった事件ですが、刑事裁判や民事裁判といった外部への事案の公表がなされる手続の前に、当事者間で迅速に示談解決できたのは、被害者にとってもベターな解決であったのではないかと思われます。

 瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一


※事案紹介全般において、特定を避けるため、事案内容を脚色している部分があります。


 

2025年6月25日水曜日

【解決事例】爆サイでの誹謗中傷被害について告訴及び発信者情報開示を行った事案

 1 事案

 ある県で爆サイの地方板で、被害者が不倫をしているという虚偽の内容を具体的事実を含んで繰り返し投稿するという被害があった。

 被害者及びその配偶者はとても怒っており、犯人を特定して警察に突き出して処罰も、賠償も絶対にさせたいとのこと。

 ※開示命令手続が創設される前の事案

 

2 対応

 管轄の警察署に被害届提出。爆サイへ発信者特定のための開示請求。爆サイからIP等の開示があり、アクセスプロバイダ(携帯電話会社)へ開示請求及びログ保存依頼(訴訟外)。

 アクセスプロバイダが加害者へ意見照会をした際に、当方の請求内容、刑事告訴等の事情を加害者が目にし、加害者が警察に自首。警察からも賠償等の進捗を見てから刑事処分の判断をしたいとのことで、まずはアクセスプロバイダに発信者情報開示の同意をして開示費用が増えないようにすることを要求。発信者情報が開示され、加害者の氏名・住所が判明。

加害者と交渉。被害者(依頼者)は加害者が近所にすむ住人であったことから加害者の引っ越し等の要求もあったが、もろもろ交渉の結果、慰謝料300万円+投稿の削除費用、加害者特定のための弁護士費用の合計を賠償、今後被害者及びその家族に近寄らない、被害者らに関する投稿を今後しない、違反した場合の違約金設定等の示談条件にて示談(和解)。加害者の刑事処罰についても、告訴を取り下げたことから処罰なし。


3 コメント

加害者が被害者の近所で、近所付き合いも密接な地域であろうと思われる地域であったことや加害者も一定の社会的地位があったことから、刑事処分を受けたり、事件の内容が外部で公開される事態は避けたかった模様。

 被害者らの怒りは相当であり絶対に刑事処分を受けさせたいとの思いもあったが刑事処分が明らかになると事件の内容も近所に明らかになり、被害者らのプライバシーについても一定程度害されるおそれもあったことから、最終的には、金銭支払で刑事告訴なしという示談で決着しました。

 賠償金額については、裁判基準でいうと、慰謝料という名目ではここまでの賠償額は一般に認められにくい。一方で、加害者としても刑事罰を受けない、周りに知られずに事件を穏便に解決したいという利益があり、裁判基準より高額の示談となりました。私見では、裁判所が認定する慰謝料の額は低額すぎるし、被害者家族の長期間の苦悩や仕事や健康に及ぼす影響を考慮すると高くなく相当な金額ではないかと感じた事件です。

 裁判によらない賠償金額は、当事者の合意ですべて決まるもので、事案の内容にもよりますが、被害者の立場、加害者の立場・資力等によって大きく異なります。最近の有名芸能人の事案では、示談金数千万円という話も出ており、これは加害者の資力が高いためと事件を外部にもらさず解決するということを想定したためと思われます。

2025年6月16日月曜日

ネット投稿の加害者になり開示請求の照会を受けた場合の対応

  


当事務所では件数は多くありませんが、インターネット上の投稿をしたことにより加害者であるとして、被害者が開示請求手続きをとった場合の意見照会の対応もしています。

 被害者がインターネット上のコンテンツプロバイダ(掲示板、SNSサービス提供者)や通信会社に開示請求をすると、当該会社が投稿者の契約情報(氏名、住所その他)を知っている場合は、その投稿者について、開示請求があったことと開示請求についての意見照会をすることになっています。

 このときに、開示に同意をすると回答すると、これらの会社は開示に同意があったとしてすぐに開示をすることが多いです。被害者と加害者である程度やりとりがあって開示手続に時間をかけないほうが開示費用の関係でよい場合はこの対応をとることもあります。

 しかし、一般的には、開示をしてほしくないと考えるのが通常でしょう。コンテンツプロバイダや通信会社は、開示には消極的ですが、裁判手続となり裁判所から開示を命じられた場合は開示をします。一方、コンテンツプロバイダや通信会社は、被害者からの開示の申立について反論する資料等をもっていないのが通常です。このため、照会があった場合の意見書において、開示をするべきでないという事情を記載し、できれば証拠資料もつけて提出したほうが開示を阻止できる可能性が高くなります。

 この開示をするべきでないという意見においては、開示の要件である権利侵害の明白性がないという争い方がメインになりますが、その内容については法律的要素が大きいので弁護士に依頼をして意見書の作成をしたほうがよいでしょう。

 また、発信者情報開示が裁判手続になっている場合は、その手続に、利害関係人として参加したり、記録を謄写したりすることもできます。その際、通常は、裁判手続きにおいては、氏名や住所を被害者にも明らかにしなければなりませんが、近時の法改正により、「住所、氏名等の秘匿制度の創設」がなされましたので、住所・氏名を被害者に秘匿した状態で裁判手続に関与することも可能になっています。

 開示請求手続きの意見照会がきてお困りの方は、瀬戸法律事務所までご相談ください。

 瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一

2025年6月10日火曜日

X(旧Twitter)の開示対応が遅すぎる、裁判所の執行も怠慢

1  X(旧Twitter)の開示対応が遅すぎる、裁判所の執行も怠慢というお話です。


2 X(旧Twitter)が発信者情報開示命令が出ても開示しない、1ヶ月経過して確定しても開示しない、

 間接強制の強制執行を裁判所に申し立てても、裁判所がこちらが問い合わせをするまで何も対応しない、裁判所の指示どおりに書面等は送付しているのに、1ヶ月以上も放置、どうなっている?とこちらが問い合わせをするとやっと、「今週催告書送った」とかいう。絶対連絡いれるまで何もしてなかったやろう、そば屋の出前か!!という感じであきれる。

 裁判所もほっといたら開示されて取下げになるだろうという考えなのだろうか、ほっといて開示されないから強制執行してるのだとなぜわからない。

 まあ、開示しないX(旧Twitter)が悪いのだけど、裁判所がすみやかに対応していれば、X(旧Twitter)の態度もかわってくるだろうと思うし、裁判所も軽めの幇助犯。

 他の弁護士も X(旧Twitter)は対応遅すぎると言っているし、執行まで必ず必要として今後は受任をしないといけないだろうと思われます。

瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一

2025年6月3日火曜日

キャッシングの消滅時効、貸金業者の提訴、公示送達

  先日、裁判所に久しぶりに行きました。WEB期日が一般化して裁判所庁舎に行く機会が減りました。

 裁判所の端に、公示送達の公示のための掲示板があり、昔はA4の紙で表示してたのに、今はA5の紙に2枚表示(大きさ4分の1)で表示している。誰も見てないだろうというためか、掲示場所が足りないためか。

 それで、前からある福岡の貸金業者しんわが公示送達で提訴してたのを見て、むかし、消滅時効にかかった貸金債権で提訴してたな、またやっているのかと思ったけど、今、普通に貸金業務再開しているみたいです。

 まあ、貸した金を返さないほうが悪いんやけど、貸金が仕事で、適正な貸付が義務付けられている貸金業者で、消滅時効にかかるまで法的回収をしなくて、消滅時効完成した後に多大な利息・遅延損害金を付加して請求する(回収の見込みがあると何らかの情報をもって行う)のは、やっぱ相当じゃないでしょう。

 けど、時効援用があるまで債権自体は存在するというのが法律ですから、消滅時効完成した貸金債権でも、提訴されてそのまま争わないと支払えという判決が出て、確定すると、もう消滅時効であるとはいえなくなります。

 このため、提訴された段階で消滅時効を援用しないといけません。

 また、住民票を引っ越しの際にきちんと動かしていないと所在地不明ということで公示送達を受け、提訴されたことをしらないまま判決がなされることもあります。

 キャッシングで最終取引から5年経過していたら消滅時効が完成している可能性がありますので、弁護士に相談をして確認し、消滅時効完成していれば援用手続きをしましょう。これで晴れて債務なしになります。


 瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一