1 事案
ある県で爆サイの地方板で、被害者が不倫をしているという虚偽の内容を具体的事実を含んで繰り返し投稿するという被害があった。
被害者及びその配偶者はとても怒っており、犯人を特定して警察に突き出して処罰も、賠償も絶対にさせたいとのこと。
※開示命令手続が創設される前の事案
2 対応
管轄の警察署に被害届提出。爆サイへ発信者特定のための開示請求。爆サイからIP等の開示があり、アクセスプロバイダ(携帯電話会社)へ開示請求及びログ保存依頼(訴訟外)。
アクセスプロバイダが加害者へ意見照会をした際に、当方の請求内容、刑事告訴等の事情を加害者が目にし、加害者が警察に自首。警察からも賠償等の進捗を見てから刑事処分の判断をしたいとのことで、まずはアクセスプロバイダに発信者情報開示の同意をして開示費用が増えないようにすることを要求。発信者情報が開示され、加害者の氏名・住所が判明。
加害者と交渉。被害者(依頼者)は加害者が近所にすむ住人であったことから加害者の引っ越し等の要求もあったが、もろもろ交渉の結果、慰謝料300万円+投稿の削除費用、加害者特定のための弁護士費用の合計を賠償、今後被害者及びその家族に近寄らない、被害者らに関する投稿を今後しない、違反した場合の違約金設定等の示談条件にて示談(和解)。加害者の刑事処罰についても、告訴を取り下げたことから処罰なし。
3 コメント
加害者が被害者の近所で、近所付き合いも密接な地域であろうと思われる地域であったことや加害者も一定の社会的地位があったことから、刑事処分を受けたり、事件の内容が外部で公開される事態は避けたかった模様。
被害者らの怒りは相当であり絶対に刑事処分を受けさせたいとの思いもあったが刑事処分が明らかになると事件の内容も近所に明らかになり、被害者らのプライバシーについても一定程度害されるおそれもあったことから、最終的には、金銭支払で刑事告訴なしという示談で決着しました。
賠償金額については、裁判基準でいうと、慰謝料という名目ではここまでの賠償額は一般に認められにくい。一方で、加害者としても刑事罰を受けない、周りに知られずに事件を穏便に解決したいという利益があり、裁判基準より高額の示談となりました。私見では、裁判所が認定する慰謝料の額は低額すぎるし、被害者家族の長期間の苦悩や仕事や健康に及ぼす影響を考慮すると高くなく相当な金額ではないかと感じた事件です。
裁判によらない賠償金額は、当事者の合意ですべて決まるもので、事案の内容にもよりますが、被害者の立場、加害者の立場・資力等によって大きく異なります。最近の有名芸能人の事案では、示談金数千万円という話も出ており、これは加害者の資力が高いためと事件を外部にもらさず解決するということを想定したためと思われます。
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