平成26年7月24日と29日に,過払金訴訟 遅延損害金 期限の利益喪失について
いわゆるボトルキープ論といわれる主張についての最高裁判決がでました。
24日の判決も29日の判決も
「元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において,借主から約定分割返済額を超過する額の支払がされたときには,当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事
情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する債務に充当されることはないと解するのが相当である。」
としました。
ボトルキープ論とは,何かというと,
貸主側が約定の支払時期に弁済がなく遅延損害金が発生する
と主張したことに対して,
約定の利率を前提にすると支払がないことは確かだが,
利息制限法の適用を前提とすると,毎回,しはらわなければならない金額よりも多くの金額を弁済しており,その額を累計すると,遅延したとされる日において,先行して弁済を行ったことと同じであるから,遅延損害金が発生しない
という主張のことである。
この主張について,最高裁は,利息制限法の制限利息を超える弁済は,元利均等分割返済方式においては,弁済時に,元本へ充当され,その時点で借主は利益を得ているのであるから,その後に発生する利息についても弁済済みと評価するのは二重に弁済と評価するものであってそのように解釈できず,約定弁済日に,利息制限法の制限利息を前提として計算した元本から算出される利息金を支払っていない以上,約定の弁済がなかったとして遅延損害金が発生するとしました。
一方,利息制限法の制限利息を超える弁済を将来の貸付利息に充当する旨の合意がある場合は,将来の利息に充当する結果(この場合,元金には充当されないため,発生利息は多くなる),遅延損害金が発生しないとしました。
基本的に,利息制限法の制限利息を超える弁済を将来の貸付利息に充当する旨の合意というものは想定しにくく,最高裁の補足意見が指摘するように,その合意は,借主にとって有利とも言い難いため,今後は,ボトルキープ論は使えないと思ったほうがいいのではないかと考えています。
ボトルキープ論がなくても,期限の利益の再度付与や信義則の適用で遅延損害金の問題は対応できると思いますし,逆に,その主張ができない場面では,遅延損害金が発生することを前提に考えなければならないかと思われます。
0 件のコメント:
コメントを投稿