2024年年末から2025年前半にかけて、Twitter(X)に対して、裁判手続きを使った開示請求を行った結果のまとめを記載します。
1 通信経路ルート
まず、X社は、発信者情報開示命令手続の際の提供命令には応じないため、開示命令でIPアドレス、タイムスタンプの開示を求めるか、仮処分命令申立によりIPアドレス、タイムスタンプの開示を求めなければなりません。
仮処分命令申立の方式は、手続が速い一方で、開示命令申立を一緒に行うと仮処分と開示命令の双方の期日を同一で開くことになるため、1日でも急ぐ場合は仮処分命令申立だけ先行させたほうがよいと思われます。
また、仮処分命令については、発令のために、裁判所から指示があってから1週間以内に東京法務局へ供託をして、供託書(の写し)を東京地裁へ提出する必要があるため、遠方の方(代理人)は基本的に東京へ行く必要があると思われます。オンライン供託はできますが、供託書を入手するために、供託後東京法務局へ郵送のための封筒等の郵送→東京法務局からの返送→供託書の写しを裁判所へ郵送の手順を経ると1週間は優に過ぎてしまうからです。
また、仮処分命令が発令されても、それだけでは、X社は、任意に情報を開示しません。仮処分命令が発令されたらすぐに送達証明書を取得して、強制執行の申立をしないといけません。仮処分命令については2週間で強制執行できなくなります。
開示命令の場合は、命令がでてから確定まで1ヶ月かかります。(情報流通プラットフォーム対処法14条1項、5項)
1ヶ月経過した後、送達証明書、確定証明書を取得して強制執行申立をして、初めて開示されます。
X社については、開示のためには強制執行が必要と考えておきましょう。強制執行申立をして裁判所からX社へ履行の催告がなされるとすぐに開示が行われることが多いようです。
2 電子メールアドレス、電話番号ルート
上記のとおり、開示までに時間がかかるので、通信経路ルートでは、3か月しか通信ログをもっていない携帯電話会社の通信の利用が多い今般では、時間切れになる可能性がかなり高いです。
このため、X社に登録してある電子メールアドレス、電話番号のルートから特定する必要があります。
しかしながら、電子メールアドレスは、gmailなどのフリーメールアドレスの場合は結局発信者が誰か特定できないということになることが多く、また、Twitter(X)では、電子メールアドレスだけの登録でアカウントを作成していることも結構多いため、特定できないというリスクは結構高いです。
電話番号が登録されていれば、ほとんど日本国内の事業者の電話番号でしょうから、その後、弁護士会照会等で契約者(発信者)を特定することができると思われます。
3 まとめ
上記のとおり、できるだけ特定をしようとすると、仮処分申立てと開示命令申立の併用ということになり、双方とも強制執行申立が必要になります。
また、遠方の方や代理人に依頼をすると、東京への出張交通費や日当も必要なろうかと思います。
任意に開示をする他の業者と比べると開示のための手続が多くなることから、費用(弁護士費用)も多額になると思われます。
瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一