2026年1月22日木曜日

【判例紹介・解説】「デマだ」と動画で発言した際の賠償請求(高裁 否定)

 東京高裁 令和 7年 8月 4日判決(確定等不明)

【事案】

Xさんがインターネット上の投稿等において、特定の個人を名指しして、同人が出自を偽って我が国の戸籍に不正に登録された旨を指摘したこと等に関して、Yさんがインターネット上で配信した動画の中で、Xさんの上記指摘について「それは客観的にみてちょっとひどいデマじゃないの」、「これは明らかにデマだ」及び「これはちょっとひどいデマだよね」との発言をしたことについて、名誉毀損を理由とする損害賠償請求

【裁判所の判断 骨子】

・(Yさんが行ったY発言は)Xさんがインターネット上の投稿等において摘示した事実が真実ではない旨の事実を摘示するものであって、このような事実の摘示は、Xさんの社会的評価を低下させるものであるとはいえない

・Xさんが「原告摘示事実」(Bさんが〇〇している事実)を摘示する発言(以下「X発言」という。)をしたことを前提として、原告摘示事実が真実ではない旨の事実、すなわち、Bさんが〇〇していない事実を摘示するものであると理解するのが相当である。

 ただし、Y発言は、X発言が「デマ」であるとの表現を用いているところ、このような表現は、本件動画中の前後の内容から切り離して理解する場合には、本件動画の視聴者に対し、Xさんが、原告摘示事実が真実と異なることを知りながら、又は真実であるか否かを顧みることなく、X発言をした旨の印象を与えるものであって、穏当を欠くものであることは否定できない。

 しかしながら、本件動画は、Xさんが原告摘示事実の真実性の根拠として挙げる諸事情を紹介した上で、それらが原告摘示事実の真実性の根拠として不十分である旨を指摘する内容になっているところ、このような本件動画中の前後の内容を踏まえると、Y発言は、Xさんが一定の根拠に基づいて本件発言をしたことを認めながらも、Xさんが原告摘示事実の根拠として挙げる事情が根拠として十分ではないこと、ひいては、原告摘示事実が真実ではないことを強調する趣旨で、「デマ」という表現を用いたと理解するのが相当であって、Xさんが、原告摘示事実が真実と異なることを知りながら、又は真実であるか否かを顧みることなく、X発言をした旨の事実を摘示するものであると理解することは相当でない。

・X発言が摘示した事実(原告摘示事実)が真実ではない旨の事実を摘示するものであって、このような事実の摘示は、原告の社会的評価、すなわち、原告が、品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであるとはいえない。

・「デマ」という表現を用いたことによりXさんの社会的評価が低下することがあるとしても、その程度は僅少であるというべきである

【解説】

動画でXさんの発言はデマと言ったことが名誉毀損になるかという話ですが、動画全体では、Xさんの発言について根拠が薄いと言っていることから、一定程度の根拠はあると言っていると受け取られるから、

この場合の「デマ」≠嘘つき(嘘とわかって言っている、調査もせずにいいかかげんに言っている)で、

この場合の「デマ」=真実ではないことを言っている

で、結果として真実ではないことを言っている場合は、社会的評価の低下がないという判断の模様です。嘘つきの場合は、社会的評価の低下があるということですが、一般人がそのように細かく認識を変えてとらえるかと考えると個人的には微妙に感じます。

やはり、結果としてでも、真実ではない発言をしているというように受け取られると社会的評価は低下するのではないでしょうか。

対象の動画は見ていませんが、判決に記載してある事情からすると、XさんとYさんとの間である事実について見解が違うというような内容のようです。ですので、事実摘示があったというよりも、「デマだ」=ある事実についてXさんの反対の結論が正しいという論評や意見の発言と、実質的に捉えて、意見論評で許される範囲を逸脱していないとして、賠償を認めないという結論に沿って、構成したのではないかと思ったりもします。

「デマだ」という発言が不穏当という判決の記載にもあるとおり、あまり多用されるべき言葉ではないというのはそのとおりで、これが意見論評の言葉と広く認知されることは避けたい、名誉毀損になる場合もまあまああるよという注意喚起とか波及効果も考えて判決をしたのだと深読みすると、事実摘示と捉えて判決した本件の方法のほうが妥当であったと個人的に思ったりもします。

人の発言を批評する際には、「デマだ」というような言葉は控えて、「真実ではないと自分は考えている」など穏当な発言にしたほうがよさそうです。

瀬戸法律事務所 弁護士 瀬戸伸一


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