通常,インターネット上の書き込みで,削除をしてほしいという御相談,御依頼は,権利を侵害された人(被害者)ですが,まれに,書き込みをした人(加害者)からの削除の御相談・御依頼があります。
書き込みをした人(加害者)は,書いたものの,それが権利侵害(名誉毀損,プライバシー権侵害など)であることを自覚,またはその可能性があると考えて,消したいと思ったが,電子掲示板に一度書いてしまうと,自分の意思では消すことができない(削除パスワードを設定していなかった場合なども含む)ため,御相談・御依頼に来られるようです。
書き込みを削除することができると,書き込みのIPアドレス等発信者特定情報が消えるところが多く,事実上,被害者から損害賠償請求を受けない効果が期待できます。また,損害賠償を受けたとしても,書き込みが削除済みであると,残っているより低額で済むことになります。
しかしながら,プロバイダ責任制限法や同法に準拠するガイドラインによる削除要請は,被害者からの請求によるもので,加害者からの削除要請は,予定されていません。
すなわち,加害者からの削除要請は,法律に基づかない,掲示板運営者に対する単なる「お願い」にすぎません。
このため,加害者からの削除要請については,削除されない可能性が十分あります。
一方,各電子掲示板運営者は,各自で,運営規則(削除要件)を定めているところが多く,この運営規則(削除要件)に該当することを具体的に指摘して削除要請をすると,削除に応じてくれることも少なくないです。
一般の方の削除要請は,削除理由として,この運営規則(削除要件)に該当するという内容がない,または,ほとんど書かれていないため,削除が認められないのです。
書き込みをしたある方は,自分で,複数の書き込みの削除要請を掲示板運営者に出したが,全部,削除されないままであったため,当職に削除要請をするよう御依頼されました。
当職が,掲示板運営者に対し,運営規則(削除要件)に該当するという内容と掲示板運営者が削除しようと思うようなあることを記載して,削除要請をだしたところ,削除要請をした書き込みの8割以上が削除されました。
加害者からの削除要請については,作業量の関係で,通常の被害者からの削除要請よりも,弁護士費用は高くならざるをえませんが,それでも,被害者が発信者情報開示請求をして特定をされて損害賠償請求されるよりも(発信者特定のための費用は損害賠償請求における損害に含まれるという下級審判例があり,一般化しつつあります)低額の支出ですむと思われます。
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